私の職場はフリーアドレスである。
つまり好きな席に座れる。
自由だ。
そして職場には寒がりの男性がいる。
私は彼を寒がり男と呼んでいる。
もちろん本人には言っていない。
心の中だけである。
彼は寒い。
とにかく寒い。
夏でも寒い。
他の人が快適そうにしていても寒い。
寒いという。
事実、かなり長い期間フリースを着ている。
ここまではいい。
人それぞれ体感温度は違う。
私もそれは理解している。
問題はここからである。
彼はなぜか毎回エアコンの真下に座る。
一度や二度ではない。
毎回である。
私は最初、自分の勘違いかと思った。
しかし違った。
何度見てもエアコンの真下だった。
席は他にも空いている。
窓際もある。
壁際もある。
エアコンから離れた席もある。
しかし彼は選ばない。
なぜか真下である。
そしてしばらくすると動き出す。
上を見上げる。
エアコンを見る。
立ち上がる。
私は察する。
来る。
そして設定温度を上げる。
私は毎回思う。
なぜだ。
寒いなら移動すればいい。
誰も君をそこへ固定していない。
しかし彼は移動しない。
翌日もまた同じ席に座る。
そして寒くなる。
そして温度を上げる。
私は最近、猫舌男の研究もしている。
猫舌なのに熱いものばかり選ぶ人物だ。
どうやら世の中には、
苦手なものを避けるのではなく、
苦手なものの近くで生活する人々がいるらしい。
猫舌男は熱いものを選ぶ。
寒がり男は寒い席を選ぶ。
私は理解できない。
ただ、長年観察していて一つだけ分かったことがある。
彼はたぶんエアコンの下が好きなのではない。
毎回同じ席が好きなのだ。
そして寒くなった結果だけを修正しようとする。
人間は思った以上に習慣の生き物なのかもしれない。
それでも私は思う。
明日こそ一つ隣に座ればいいのではないか。
研究は続く。